言いたいことはすぐ言う

口が過ぎれば足を取られます。基本的にはWord2ページ程度

見て、観て、知って

税金の恩恵…というと、何かふるさと納税っぽいけど
私が受けている尤もたる恩恵は“芸術分野”になる。

地理的条件が余りにもお粗末なので浸透率が低く
毎回、勿体ない限りだと思ってる次第だが…。


去年から自主文化事業で噺家を呼ぶところがある。
値段は破格、タダにはしない。
それは芸術に触れる上で当たり前の感性を忘れないためだ。


芸術は一定条件の下に培われて初めて価値が生まれる。

芸術を見られる条件下とは、一定の幸せと平和がある証拠だろう。


坂口安吾は『戦時中、文士は未亡人の恋愛を書くことを禁じられた』と、戦争論堕落論で述べていた。

噛み砕くと、『戦争で旦那を送り出した未亡人は“美学”の下、一途で無ければならない』という理屈だったらしい。


…話は逸れたが、今回、私は前から二列目、ど真ん中というプレミアムチケットを手に入れていた。

一人で席を取ると、ごく稀に宛がわれる穴だった。

「(今後、チケットごときで文句を言うまい)」
と、心に誓い、開演2分前に顔を真っ赤にしながら
席に着いた。

私の前(最前列)は少年だった。恐らく、家族に連れられて、
特等席に座ることが出来たのだろう。


今回は文珍師匠と昇太師匠の二人会。
前座の後、昇太師匠、文珍師匠が高座に上がった。


二列目からの景色は見上げるものだったが、その分
細かい所作振る舞いだったりがパソコン疲れの目に
はっきりと映る。


昇太師匠、噛まなくなってる…あぁ、染み出す色っぽさは円楽師匠に劣るな…何でメガネフレームは赤なのに、
時折青く見えるのだろう。魅せてるのかな…。

そんな中、彼の烏の足跡と首、手に目が言ってしまった
母親が『女は手と首に年が出る』と言ったが…。
年…相応じゃないか…。

足らない紅を眼鏡に集めたようだと思った。



文珍師匠が高座に上がる。
何故だろう。昇太師匠より若く見える…
恵比寿顔とはこういう表情なのだろうな…
上手下手に向ける顔は、違和感なくフルコンボで、
マジシャンのカードの様なネタの始まりで空気が変わる…。
話の速度が変わった…今の口調から…

何て贅沢な時間なのだろう…自分はココにふるさと納税をすべきではないか?
いや、確か教育委員会と共同主催か。


講演終了後、未だ冷めぬ熱に浮かされながら外に出る。
明日は職場の同僚が苦笑するまで喋るんだろうな…


ただでさえ台風接近で危ぶまれた公演だった。
見れば市役所の名札…
この芸術を見られたのだろうか。

そう思いながら送り出す職員に会釈をする。
出口付近で客を送り出す市のシャツを着た人がいた。


今日の公演は台風接近で、本当に開演されるのか、午前中から何度も何度もホームページで確認をした。
そこのホームページで毎回見た顔だった。
「え、…あ、ありがとうございました。」
『素敵な公演でしたねぇ』
普通の人だった。


外に出てから思う。「(そりゃ“市長”だもんな、話す機会もあるだろうし…)」

だけど、招いた側として、客が笑顔で帰る姿はやっぱり見たいものなのだろうか。


そう思いながら、帰路に就く。
そう言えば、春風亭昇太師匠も桂文珍師匠も
やけに嬉しそうに『今日ね、泊まりなんですよ~』
と、言っていた。


この便利社会で噺家に休みを提供出来るド田舎も悪くないな。
高速も、電車も地下鉄も無い。
空港まで1時間半。

適度な田舎というのはもしかすると、“生”で芸術を見られる中心地にもなり得るかもしれない。


最後に、文珍師匠の下ネタで、前の少年が隣の
母親に質問していたが、『後で』と黙らせられたこで、
その母親は一体どうやって回答するのだろうか。
それだけが心残りである