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社会人2か所目の春

4年目の春
僕は4年前慣れないスーツに着られた状態で見上げた本社にいた。
 

そして3年の時を経てワイシャツ、スラックスにベストという服装でここに来た。
服装を改めることは考えていなかった。
前の部署で“ベストの人”と呼ばれるくらいには定着しており、実際僕のアバターを象徴するアイテムと化していたからだ。
僕が二か所目に配置されたのは本社の中枢。
前の部署の課長がコネでも使ったのかというくらいには皆『栄転』と言ったが
僕は複雑だった。
まず第一に“曰くがありすぎる”のだ。
僕の前任者は異例の短期異動だったし、その前の前任者は半年で退職。
その前は寿退職で・・といった具合に長く続かないポジションとしても有名だった。

そして第二に“周りに教えてもらえる人”がいない。
ここの職場では一人一人がこの大企業の、人間でいう“臓器”となって支えていた。
つまり、ここの部署は全員“別々の分野で活躍するプロの集まり”なのだ。
 
人間の臓器は個々が基本的に独立している。
勿論他を補う臓器もあるが、目は“見ること”耳は“聞くこと”に特化しているように
この職場もまた、同様だった。
 
ある意味僕は“臓器移植”でここに来たようなものなので自分の働きが分からなくなると、僕の前任に聞く以外無く、かといってあまりにも聞きすぎるとうるさがられると思い、メールでのやりとりを主とした。
 
第三に本部の・・人間でいう臓器の大切さを身をもって痛感させられた。
前までは出先部署の“一細胞”として動いていて、多少のミスはあまり周りに悪影響を与えなかった。
ここでは僕が臓器としての流れを汲み、先を見通して細胞一つ一つに支持を出し、その形を維持し、なんなら更に健康にしていかなければならない。
それだけに一つのミスが大きな痛手となる。
何故半年も先の事を考えなければならないのか。
しかし先を見通す力が無ければ生きていけない。
そんなところだった。
 
とはいえ、この職場で人生初の体験をする羽目になったのは後日の話。