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言いたいことはすぐ言う

口が過ぎれば足を取られます。基本的にはWord2ページ程度

2cm×3mm

手を合わせてからスイッチを入れ、
うぃ~ん・・・バリバリバリバリ・・・・
大分古い職場のシュレッダーに次々と用紙を差し込んでいく。

私が担当する企画書の没案(の残部)だ。
・・・とはいっても自分が企画したものではない。

企画させておいて“自分たちが切り捨てた案”だ。

 

0から1を作り上げるのは難しい。
私が企画をお願いしてから大体1ヶ月。
勿論他の仕事もあるだろうが、ある程度考えてくれただろう。

私が出した要望は『これとこれだけ押さえて下さい。後は自由な発想を求めます』
そんな要望書から作り上げるのだから逆に相手にとっては不安材料かもしれない。

もしかすると“ここのを踏み台にすればいいから”
そんな新人社員へのチャレンジの場として無下に扱われても構わない。
現におかしな企画書も受けてきた。

それは相手に一任させたこちら側の責任だろう。
そしてこの間、私が担当する一番大きな企画のプレゼンがあった。

プレゼンは公平に行うので、当日のプレゼンの時間まで審査側は
担当の私ですら何の情報も持っていない。
だから企画書は指定した部数を準備させる。
15分程度のアピールで終了。

企画オーディションみたいなものだ。
しかし、企画依頼料も発生しなければ、準備費用も用意されない。
ハイリスクゼロリターンが主な企画だ。

プレゼンが終わり、担当者が出て行ったドアを閉める。
「では結果集計を行います。」
席を立たせずその場で評価用紙の回収。情報漏洩をさせないためだ。

 

1時間後。
『・・・じゃあここで。』
一つを除いて全て没案になった。

「では、“頂いた企画書を回収します。”」
全ての企画書を回収して、決定した案と担当者保管用以外を全てシュレッダーにかける。
機密保持のために。

1ヶ月と15分+審査する職員全員分の企画書。


きっとこんな感じで考えてきたんだろうな・・・
気合入ったプレゼンだったな・・・・
たどたどしいから新人さんかな・・

 

一つの案を通すためにいくつもの案が没になる。
仕方がない。こっちの方が良い出来だったから。
割り切るからせめてこの企画書“だった”ものに合掌する。

ホチキスを外して重ねると大体広辞苑一冊分ぐらいの厚さになった。
シュレッダーで15分。
2㎝×3㎜の紙くずになった1ヶ月と15分。

ここから後は1を100にする作業・・・ではない。
私にできるのはその1にどんなマイナスも出さないように完璧な“1”を作り上げる。
決定されたことを滞りなく終えるために全力を尽くすだけだ。

『お互い仕事なんだから。』
0から1は作れない。1以上にも出来ない私がこの紙くずに手を合わせない理由はどこにもない。

『まだ成仏させるには早いよ。』と上司が言う。全て終わってからだろと言わんばかりの口調だ。
「念仏は唱えてません。」
苦笑しながらゴミ袋の口を結んで背負う。

こんな割り切れない馬鹿にはつける薬も無いだろうし、まだ私には必要無い。
責任背負った気にならなきゃこっちは走れないもんだから。

そう思いながら速度を上げたカウントダウンを目にパソコンに向かう。
『貴社の企画は残念ながら・・・