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言いたいことはすぐ言う

口が過ぎれば足を取られます。基本的にはWord2ページ程度

愛花咲くように

同級生に尊敬できる人はいるかと聞かれたら即答できる自信がある。
“高校のクラスメート、アイカ(あえて名前を出させてもらった。)だ。”
同級生には今は国家資格を取って看護師になって高給取りの友人もいる。
しかしあの田舎のとある高校で出会った彼女が同級生で一番尊敬する人だ。

たまに「(どうしてあんな人とあんな人が仲が良いんだろう)」と思う二人がいたりする。

自分もニュアンスは違えど高校生の時に先生に言われたらしい。
『分け隔てなく“みんな”と接してくれるから助かる。』
これは母親から聞いたことなので真偽は分からないが、言わんとすることは分かる。

クラス一。いや、学年一の留年ギリギリの型破り田舎ヤンキーと、大抵のテストでは学科トップ10にいるクラスの副委員長が仲が良かったのだから。

その頃の私は先生からも(一部を除き)評判はまあまあ良かったし、決して頭の良い高校ではなかったが、高校時代はそこそこ充実していた。

アイカは明るめの茶髪に二つ三つ空いたピアスホール。生徒指導室の常連、おまけに(学校に黙ってだが)夜はキャバクラでバイトしているというテンプレ的田舎ヤンキーを揃えていた。

何故仲良くなったのかは分からない。
確かに勉強は出来なかったし、下品だったけど、絶対に人の悪口は言わなかった。

ふと、彼女に『ぐーじは私のことどう思う?』と問われた。
その時、少し恰好を付けて答えたのを覚えている。
「アイカの今とかけて、結ばれた心と解きます。」

アイカはきょとんとして『その心は?』と聞いてきた。
「アイカなう(愛叶う)でしょう。」
今では恥ずかしいが、その時、我ながら上手いことを言ったと心で思っていた。

そんなアイカは教育指導上では、確かに、多少の問題はあった。
1年次の終業式の日には担任に暴言を吐いて中途退席。

何よりも衝撃だったのは卒業式。
卒業式を終え、両親と帰ろうとして、ふとアイカを見つけた。
アイカは父親と一緒だった。

だがその後、横づけされた車から降りて来たのは幾分も年の変わらないようなこれまたテンプレ的見た目ヤンキー。恐らく彼氏だろう。

父親の目の前でその彼氏に思いっきり抱き着いて、父親に何か言ったかと思うと、その彼の車に乗ってどこかへと言ってしまった。

『俺・・父親だったら耐えられないかもな・・』
父の言葉に、親子三人残された彼女の父親をとても直視出来ずに帰ったのを覚えている。

そんなアイカと飲んだのは卒業して丁度半年。どちらか誘ったのかは分からない。
あの後結婚したらしい。
『あ、子供出来たんだ~。』
焼き鳥を食べながら言った言葉にさほど驚きもしなかった。


次の言葉までは。

 

『来月には生まれるんだ~。』


「・・・・ん?」
卒業式が3月。今は9月で・・・在学中・・・よくつわりとか乗り越えたな・・
少し混乱しながらも「そっかー」と流してその日は終わった。

出産の報告が来たのはその3日後だった。予想より随分早いが母子ともに元気だった。
同級生の中で彼女に一番地理的に近かったし、お祝いを持って早速駆けつけた。
保育器の中の赤ちゃんを見ながらぼんやり思った。
18の同級生が母親になったのだ。私に置き換えるととても想像がつかない。

その後も何度かやりとりをして、そのまた半年後、アイカと会った。
子連れでも来れる店で、離乳食を食べさせるアイカはもう立派な母親だった。
羨ましいとかそんな感情は一切なく、ただただ“凄いなぁ”と思ったのを覚えている。

私は自分の面倒すら見られないのに彼女はもう子供の面倒を見ている。
するとアイカはこんなことを言った。

『私ね、今老人ホームで働いてんだ。』
思わず声を失った。
子どもの面倒を見て、その上仕事を。それも自分には出来ない介護職をしている彼女がとても凄い偉人のように思えた。

『子どもを産んで・・・パートで、将来を考えてるのかしら。
君はちゃんと正規職員だし君の方が立派だよ。』
私の周りの何も知らない人たちはそう言うが、その言葉に対してはどうしても口を荒げて反論してしまう。
あの年での彼女の強さ、覚悟は5年経った今でも私は持てないでいるからだ。

普段は「リア充滅べ」なんて言っている私だが、同時に“愛する人がいる人”を尊敬する。
彼女の人生が愛語る(愛過多る)ことを信じて。(ちと最後は無理矢理だったな)

【追記】
現在アイカは全身タトゥーのシングルマザーらしい。
あの時とはまた変わったであろうアイカにいずれ会いたいと思う。


【初音ミク】くたばれPTA【オリジナル曲】